かなと美華1

 下にショートストーリーあり







冬。寒い朝。配達も終わり、陽が出てきた時間。
自販機で暖かい飲み物を買おうと立ち寄ると、そこには自販機を睨みながら立ち往生しているみかちゃんを見つけた。
「おはようみかちゃん。あのね、それはお金を入れないと出てこないのよ?」
なんてこの間と同じことを言ってみる。この間は怒らせちゃったけど、今回はどんな反応をするのか期待した。

「そのくらい知っておるわ!」
「買わないの? それなら先に買わせてもらうわよ?」
「じぃー」
前のようにこちらをじっと見つめるかなちゃん。

「…半分こ、する?」
みかちゃんはパーっと顔を明るくさせる。
「仕方ないのぅ。かなの頼みとあればの!」

「あ…そそそ、それでみかちゃん、ここ心の準備は…」
間接チューという単語が脳裏を走り、私は顔が熱くなった。
「は?」
きょとんとするみかちゃん。

私はホットミルクティを選んでボタンを押す。
ぴぴぴぴっと機械音が鳴り、ルーレットが回る。当たればもう一本。この間は運が良かったのか悪かったのか当たってしまったが、二度続けては起こるはずも無かった。
「残念じゃのう。次は当てたいの?」
「ええ!? また私に買わせる気なの?」
「そういう意味じゃないわ!」

みかちゃんはそっぽを向いてしまう。
「今日は急いでいて、マフラー忘れちゃったの。冷えた体には暖かいものが一番」
「そ…そんなに寒いなら…こ、こうすれば暖かいぞ?」
みかちゃんは私にくっついてくる。みかちゃんの鼓動が胸を通じて心地よく体を揺らした。
「本当に暖かいね」
私は片方の手でみかちゃんを抱き寄せた。予想通りにみかちゃんは赤くなってあたふたしていた。
そんなみかちゃんを見るのが好きだった。

「はい、みかちゃんも暖かいうちに飲んで?」
私から受け取ったみかちゃんはじっと缶を見てからコクコクと飲んでいった。
「うむ。美味じゃ! 私はもういいぞ。後はかなが飲むがいい」

みかちゃんが全然気にせずに飲んだので、私が気にしすぎているのかもしれないと思った。
私はあと少し残ったミルクティを口に含む。こころの鼓動がミルクティを熱くしてした。
「そういえば…これって間接キスじゃの?」
私はその一言を聞いてふき出してしまった。
「うわっ!? 何をするのじゃ! 私はもう十分飲んだといったであろう!」

みかちゃんは顔についた液体を指で掬って口に入れた。
「ん、おいしいぞ」
なんていうものだから私はドキドキしてしまったのだった。
「はるかさんじゃないのに、はるかさんじゃないのに〜!」
一人で混乱していると、かなちゃんが首を傾げてこちらを見た。

「これはかなのものじゃろう?」
みかちゃんはミルクティをぬぐった指を私の口に入れた。
「んみゅぅ!?」
声にならない声で叫んでしまった。



別れ際。みかちゃんは私を引き止めた。
「これはお礼の気持ちじゃ!」
私は無抵抗にほっぺにチューをされる。避けようと思えば避けられる余裕はあったけど、体は動かなかった。
ミスなのか本意なのか、かすかに触れた唇がとても熱くなる。

冬の寒空。寒さは何処へやら。私の体はとてもあたたかかった。





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